体育・スポーツ界におけるジェンダー平等宣言

一般社団法人日本体育学会
理事会

 公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会(以下、組織委員会)会長を務める森喜朗氏による発言が大きな社会的関心を集めています。また、この発言について撤回と謝罪がなされ、組織委員会は「改めてビジョンを再確認し、大会後の社会の在り方にもレガシーを残すよう」取り組む姿勢を公表しました。
 周知のとおり、ダイバーシティ(性別、年齢、経歴・教育、人種・国籍、階層、宗教、価値観やライフスタイルなど個人のもつあらゆる属性や特性の違い)の受容と相互尊重を基調としながら、平和的に共生する社会を実現するための取り組みは、わが国だけでなく国際社会共通の課題となっています。
 そしてわが国のスポーツ基本法において「スポーツを通じて幸福で豊かな生活を営むことは、全ての人々の権利」と宣言しています。これを受けて21世紀初頭にスポーツ推進戦略として「新しいスポーツ文化の創造」が掲げられました。ダイバーシティの受容と相互尊重は、新しいスポーツ文化の創造に向けて、避けて通ることのできない高いハードルでもあります。
 一般社団法人日本体育学会(以下、体育学会)は、これまで暴力やハラスメントとは無縁の体育・スポーツ界をめざし、研究成果を蓄積してきました。また、ジェンダー平等の達成、差別と排除のない体育・スポーツ界の構築に向けても、同様に学術的貢献を果たすべく、研究を進めてきました。さらに研究面だけでなく、意思決定機関における多様性を確保すべく、選挙制度の改革や委員会の設置等、男女共同参画に向けた運営面の改善に積極的に取り組んできました。その成果の一つとして、本学会の役員のうち約43%が女性となっています。
 これらの活動が社会に一定の影響を与えた一方で、暴力、ハラスメント、性に関わる不平等、差別や排除を根絶するには至っていません。体育・スポーツ界には、関連する課題がまだまだ残されていることも事実です。今回の発言は、問題の根深さと深刻さを関係者に突きつけるものです。
 体育学会は、2021年度より定款を改正し、体育学/健康・スポーツ科学の進歩普及を通じてあらゆる多元性・多様性に開かれ、相互に尊重し合う公平・公正な共生社会の実現を学会の活動理念に掲げました。この理念の下、ジェンダー平等を実現し、差別と排除のない体育・スポーツ界の確立のために学術的に貢献するという責務を改めて再確認し、スポーツ団体等、関係者の取り組みに寄与する研究活動を推進することをここに表明します。

2021 年2月11日

体育・スポーツ界におけるジェンダー平等宣言
Declaration of gender equality in the field of physical education and sports(英訳)